ご納骨を前に、100年以上前の大島石のお墓のクリーニング。呉市和庄地域墓地

呉市・江田島市を中心に、お墓や石材のお仕事をさせていただいております、増木石材店の増木です。呉市和庄の地域墓地にて、ご納骨を前に、100年以上前に建てられた大島石のお墓のクリーニングをお任せいただきました。

 

呉市和庄地域墓地 追加彫刻、色入れ、クリーニング等

 

知人の方から、追加彫刻とご納骨のお手伝いをご依頼いただきました。その際、「お墓の汚れが気になるので、納骨の前にきれいにしたい」とクリーニングのご相談もいただきました。

 

こちらがご相談のお墓です。明治の終わりごろに建立されたお墓で、とても歴史があります。墓誌は新しく建てられたもので、長い間に手を入れたりしながらお参りされてきたようです。ただ、お客様がおっしゃるように、お墓本体だけでなく、ブロックの囲いや土間部分にも汚れが溜まって全体的に黒くなっています。入り口側の囲いの石も、苔やカビのような汚れが見られます。

 

灯篭は石種は分からないものの御影石で作られていて、特に印の笠の部分は汚れで真っ黒なっています。水垢や苔などの汚れです。たたき仕上げといって、表面が少しデコボコしているために汚れが付きやすいことや、周りに樹木があることも、汚れがたくさんたまっている原因のようでした。

 

明治42年、100年以上前に愛媛県産の大島石で建てられたお墓でした。棹石の下には、当時手加工で作られた蓮華台があります。その上にも印のような水垢による汚れがあります。水垢や苔のような汚れは、普段のお手入れではなかなか取ることができません。お墓を確認して、追加の彫刻とあわせてクリーニングをお任せいただくことになりました。

 

クリーニング作業と、追加彫刻が完了しました!とても明るくなりましたね^^

クリーニングの作業は、汚れが付いている場所と、汚れの種類によって方法を使い分けて行います。まずは高圧洗浄で苔や水垢を落とし、それでは取りきれない汚れは専用の洗剤を使って落とします。さらにしつこい汚れはブラシなどを使って手作業でこすり落とします。物理的に汚れを取る方法と、薬品を使って取る方法とを使い分け、隅々まできれいにしていきます。

 

お墓本体だけでなく、真っ黒になっていた敷石や土間部分も、汚れが落ちて本来の色や石肌が分かるようになっています。こうして汚れが落ちて石の色合いが分かるようになると、お墓本体と墓誌は大島石で、灯篭や下の敷石は違う石で作られていることがよく分かりますね。

 

真っ黒だった灯篭の笠もこの通りです。高圧洗浄で水洗いしたあと、汚れの強さに応じてさらに丁寧に落としました。もともとこういう赤みのある石だったことがわかります。こちらもお墓と同じ100年以上前に作られたもののようですが、現代のような機械もない時代に、ひとつひとつ手作業でノミなどを使って加工したことを思うと、当時の技術力も感じました。

 

お墓本体です。こちらは灯篭とは違い、石の表面は少し細かい仕上げがされていました。とはいえ、今のように磨き上げたものではなく、加工したあとに砥石を使って手作業でひとつずつ仕上げたものです。100年以上経っているので、石の持っているサビが少し出て茶色くなっている部分もありますが、石そのものの色合いがかなり戻りました。文字には色も入れ直しました。

 

こちらは納骨口の部分、花立を右横から見たところです。印が納骨口のある場所なのですが、経年のためなのか、もともとの造りなのか、花立との間に隙間が空いてしまっていました。こういう箇所からミツバチが中に入ってしまうこともあるので、現地で花立を加工して隙間なくぴったりふさぐようにしました。

 

周りのブロックや入り口の石なども、素材を傷めないように気を付けて汚れを落としました。お客様はご納骨の際、とてもきれいで明るくなったお墓に、「自分のお墓じゃないみたい!」ととても喜んでくださっていました。長い歴史のあるお墓はお家の歴史を残すものでもあり、これまでこうして守ってこられたことは、とても素晴らしいことだと思います。今回の作業に携わらせていただいた者として、これからも末永く大切にしていただけるととてもありがたく思います。ありがとうございました。